動物たちの守護聖人  ≪聖アントンの日≫

1月17日は、動物たちの守護聖人 聖アントンの日です。

andreas N Pixabay
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聖アントン

聖アントン(大アントニオス)は、3世紀(251-252年頃)エジプトで生まれ、裕福な家庭でキリスト教信者として教育を受けました。彼が20歳くらいの頃両親が亡くなり、それをきっかけに財産は全て恵まれない人々に与え、自分は、一般社会との関わりを絶ち、神の世界を追求しながら禁欲的な生活を送りました。

※聖アントン=聖アントニオ ここで言う聖アントンは、同じアントニオという名で他に有名なパドゥアの聖アントニオと区別するため、大アントニオと呼ばれる聖人のこと

隠者生活の間、数々の悪への誘惑がありましたが、植物と、動物たちの生活のなかで、自然から多くを学び、雑念を捨て苦行を乗り越えました。

様々な誘惑と戦う聖アントンの姿は、中世の宗教画のテーマでもよく扱われたテーマのひとつです。

聖アントンの誘惑 ヒエロニムス・ボス (プラド美術館)
 Las tentaciones de San Antonio Museo del prado

その後聖アントンが35歳の頃、また隠者生活を始め、20年ほど一般社会と離れた、苦行の生活でした。

305年頃、彼を慕う弟子たちの精神修行を導きながら、共同生活を始めます。この生活様式は、いわゆる修道院のようなもので、聖アントンは修道院生活の創始者と言われています。

しかし、その生活も5-6年ほどで、その後、105歳で亡くなるまで、また完全孤独の隠者の生活を送りました。

病人や恵まれない人、そして動物たちに説教をする聖アントン

聖アントンは動物たちの守護聖人

聖アントンが動物たちの守護聖人なのは

1.厳しい隠者生活をしながら、自然の中で生きる動植物のから多くを学んだから。
2.ある日聖アントンは、豚(イノシシ)の親子に遭遇。その子豚(イノシシ)たちは目が見えなくて困っていましたが、聖アントンが子豚たちの目を治し、その後その親豚(イノシシ)は聖アントンから離れず、なおかつ 聖アントンを外敵から護ってくれた。

などの言い伝えから。

聖アントンと豚

聖アントンのお祭り

豚は、今でこそ、特にスペインでは大事な動物ですが、旧約聖書の中には、豚は悪いもの、サタン(悪魔)といった意味の表記があり、ユダヤ教徒、そしてイスラム教徒も豚食禁止。

ただ、旧約聖書ではそうですが、それとはまったく関係のない違った宗教の人達の間では、豚は古くからすごく好まれた動物で、スペインでも食べていました。

中世のスペインには、ユダヤ教徒もイスラム教徒も生活をしていたので、豚を食べることは、サタン(悪魔)、異教徒に打ち勝つキリスト教徒というシンボル的な食べ物でもあったという説もあります。

15世紀の終わりから、スペインでは本格的にユダヤ教徒とイスラム教徒の弾圧がはじまり、キリスト教に改宗して残留するか、国外追放かという状況の中、偽キリスト教徒に成りすましている人を見つける簡単な方法は、豚肉をふるまう事でした。

このように、豚と宗教とが少なからず関係があり、聖アントンの豚を助けた話と結びつき、このお祭りが始まっていったそうです。

村の特別待遇の豚は、鈴を付けていた

昔は、村で特別に1頭、村人みんなで育てている豚がいました。この豚だけは、村の中を自由に歩き回ることが許されていました。首には小さな鈴がつけらていて、豚が近くを通ると鈴の音でわかり、村の人達はそれぞれエサを与え、大事に育てました。

村人みんなでといっても、裕福な家もあれば貧しい家もあります。
豚は賢く、どこの家がたくさんエサをくれるか覚えました。豚がいつも来る家は裕福だという証拠。村の人達も一目おきます。

その後、1月17日(聖アントンのお祭りの日)に、豚の屠殺が行われ、それぞれの部位の豚肉からハムやチョリソなどを作るのですが、この特別な豚の肉は、通常より高い金額で売買され、その肉にお金を払うのは同じく裕福な家、その収益で村の教会の修理や、また病院などにも使われました。

豚を育てることが、慈善活動の一環でもあったという事です。

祝福をうける豚

マドリードでは、聖アントンのお祭りでは、豚のコンクールがあって、優勝すると、飼い主は聖アントンの格好をして、優勝した豚と村を歩いて聖アントン教会の神父様に祝福をうける習慣がありました。

お祭りの内容は時代によって少しずつ変わっていき、時代によっては禁止されたこともありました。18世紀になると、王様たちも列席してのロメリアと言われる形式のお祭りになっていきました。(※ロメリアはもともとは宗教儀式の行列で、その後歌や踊りなどのお祭りも含めたもの)

聖アントンのロメリア(1895年)

20世紀に入ると、また形がかわり、宗教のパレードのような形から、今現在は、もうちょっとイベント的要素の強いパレードで、聖アントン教会の周辺を、騎馬警官、警察犬、盲導犬、また動物愛護の団体などがパレードをします。

マドリード以外でも、聖アントンという名前の教会には、この日、様々な種類の動物(犬、猫、鳥、亀、イグアナ・・・)が、守護聖人 聖アントンの祝福をうけるため飼い主さんと一緒に列をつくります。

祝福をうける犬 
Siena College, CC BY 2.0 via Wikimedia Commons

動物愛好家の方、(そうじゃない方も)1月17日は動物の健康と幸せを特に願いましょう。

※サン・アントン教会(Iglesia de San Antón) Calle de Hortaleza 63 Madrid