マドリードの王宮内で一般公開されている部屋に展示されているものは、どれも歴史のある素晴らしい物ですが、そのなかでも特に注目に値する物の一つが、≪ストラディバリウス≫です。
弦楽器世界最高峰≪ストラディバリウス≫
ストラディバリウスが世界でも特に有名な楽器であることは、多くの方がご存じだと思います。
そのストラディバリウスがマドリードの王宮に一般公開されているのをご存じですか?
そして、コンサートも行われています。
その値段ばかりが話題になってしまいますが、ちょっとだけストラディバリウス雑学です。
ちなみに、楽器の数え方ですが、
アントニオ・ストラディバリ(1644~1737)
アントニオ・ストラディバリは、1644年イタリアのクレモナで生まれた、弦楽器製作者です。
バイオリニストになる夢をあきらめて、1667年~1679年の間、当時イタリアですでに有名であった楽器職人ニコロ・アマティの弟子として修業をし、すぐにその秀でた才能は世に知れ渡り、故郷のクレモナで独立して工房を開いたのが1683年頃。
ストラディバリの作品に中で1700年~1725年(特に1715年)頃のものが最高傑作とされていて、その頃ヨーロッパの王家や、イタリアのメディチ家などからの依頼を受け、工房では2人の息子と多くの優秀な職人たちと共に意欲的に働いて、素晴らしい作品を世に送り出し、ストラディバリウスの名を不動のものとしていきました。
彼が生涯手掛けた作品は、約1200挺、そのうち約700挺近い楽器が現存しています。
ストラディバリは、現在のバイオリンの基本を設定するのに貢献した弦楽器製作者の一人とも言われ、また、それまでのバイオリンよりもう少し細長い形のもとを製作しました。そのフォームだけではなく、木材の下処理、厚み、表面に塗るニスなど、現在も研究対象になっている職人の技とこだわりを駆使して、バイオリン、ヴィオラ、チェロ、マンドリン、ギター、ハープなどを製作しました。
晩年、その知名度は世界規模になっていきましたが、彼が93歳で亡くなった後は、後継者がなく、ストラディバリウスの製法は、その後受け継がれることなく消えてしまいました。
1715年頃のバイオリンが作品がなかでも最高峰といわれ、その頃作成されたストラディバリウスは、作品によっては、10億円以上の金額で売買されたこともあります。
スペイン王家のストラディバリウス
マドリードの王宮には、このストラディバリウスが、5挺あります。
これらの楽器は、もともとはじめからスペイン王家のために製作されたもので、はじめは、17世紀の国王カルロス2世に贈られるために製作されたようですが、カルロス2世が跡継ぎを残さずに亡くなり、あとを継いだのは血縁関係にあったフランス生まれのフェリペ5世で、このフェリペ5世が1702年クレモナを訪れた際に贈られることになったものでした。しかし、このカルロス2世からフェリペ5世への王位継承をめぐって外国の王家も交えて戦争が始まってしまい、楽器は完成したものの、そのまま製作者のてもとに置かれたまま約70年が過ぎました。
カルロス3世の時代になって、その息子のカルロス4世のために、これらの楽器はスペイン王家の所有となりました。(1772年頃)カルロス4世は、音楽好きで、本人もバイオリンを弾いたそうです。
ロイヤル クワルテット ( パラティーノ)
マドリードの王宮のコレクションは、ロイヤルクワルテットと呼ばれ、弦楽四重奏全て揃っていて、なおかつ はじめからスペイン王家のために製作されたものという事でも価値があります。
弦楽四重奏(バイオリン2挺、ビオラ1挺、チェロ1挺)は、装飾されていて、製作者ラベルの製作年は1709年となっていますが、おそらく1600年台の終わり頃(カルロス2世が亡くなったのが1700年なのでその前ごろ)の製作されたものと思われます。
最終的にスペイン王家所有になるまで約70年ほど工房にあったもので、2期に分けて装飾をしたものとも考えられ、黒檀と象牙の埋め込み装飾の部分と、描かれた部分と装飾方法が違っています。
はじめは、五重奏で、ビオラは2挺ありましたが、19世紀のはじめ、ナポレオン撤退の際、2挺のビオラは行方不明になり、1950年にそのうちの1挺が発見され戻ってきました。
また、現在は、1700年製作のもう1挺のチェロもコレクションのひとつとなっています。
このチェロは装飾がされていませんが、今でも多くの調査の対象になっています。
このコレクションは、マドリードの王宮で一般公開されていて、なおかつ2008年以降不定期ではありますがコンサートが行われ、実際に300年前に製作された伝説のストラディバリウスを聴くことができます。(コンサートは年に数回)
楽器はいつもはガラスケースの中に展示されて、言ってみれば眠っているような状態ですが、演奏者の手によって眠りから覚め、最高峰の名にふさわしい、言葉では表現できない音となって甦ります。
王宮の外に出ることは基本的にはありませんが、1991年楽器修復のためにフランスに輸送した際は、それぞれ別の便で、また飛行機のブラックボックスのような追跡調査ができるシステムのケースに納め、万が一の事故に備えたそうです。
・・・と、大事に大事に300年継承してきた楽器ですが、実は2012年の4月写真撮影の際、なんとチェロの一部が壊れてしまうというハプニングもありました!!(すぐに専門家によって修復されました)
ストラディバリウス雑学
●世界に現存するストラディバリウスは、バイオリンが約600挺、チェロが約60挺、ビオラは約10挺、個人のコレクションになっているものもあり、正確な数は不明です。
●現存している楽器のうち 例えばバイオリンは約600挺のうち 実際に演奏に使われるのは半分くらいなんっだそうです。後の半分は、個人コレクター所有であったり、博物館展示中だったり。
●三大ストラディバリウスと呼ばれる、ストラディバリの黄金期であった1715年前後の作品で、値段だけではなく、作品としての本当の最高峰のものが存在しています。それぞれに愛称があり、
★ドルフィン(1714年)日本音楽財団所有で諏訪内晶子さんに貸与中
★アラード(1715年) 個人所有
★メシア(1716年)イギリスのオックスフォード アシュモレアン博物館
●日本には約40挺のストラディバリウスがあるそうで、国別ではトップです。なかでも、日本音楽財団は、バイオリン15挺、ビオラ1挺、チェロ3挺を保有しているそうで、国籍を問わず世界の演奏家に貸与しています。
●バイオリンで一番高価な金額で売買されたのが ★レディ ブラント(1721年)2011年に約12億7000万円
●チェロでは ★デュポール(1711年)約20億円
●ビオラでは ★マクドナルド(1719年)約45億円(競売で買い手が付かなかったそうです)
バイオリンが有名なストラディバリウスですが、ビオラは数が断然少ない分希少価値で、金額的にはバイオリンより高価になってしまいます。
マドリードの王宮のお宝のひとつ、ストラディバリウス、全てを一般公開しています。
見落とす場所ではありませんが、他にも色んな見どころがいっぱいの王宮内見学の、かなり最後の方でこの部屋を通過しますので、予備知識がないと、(ちょっと飽きてきて?)スーッと通り過ぎてしまうと残念なので、ここで紹介してみました。
王宮見学する際に思い出してくださいね。