ヨーロッパの古い教会、大聖堂をよく見ていると、上の方に首の長い怪獣みたいな装飾が飛び出している物があります。これがガーゴイルです。
どれもなかなか面白い顔をしています。見れば見れ程おもしろい(顔)のガーゴイルの歴史雑学です。
ガーゴイルって何?
ガーゴイルは、雨どいの機能のある、怪物の姿の彫刻 のことです。
ガーゴイルがこのように目立つようになったのは12~13世紀頃で、ゴシック様式が流行っていた時代です。
ゴシック以前のロマネスク様式の頃は、下の写真のような建物で、壁を支えるために ある程度壁が厚くないと壊れてしまい、あまり大きなものだと支えきれないという事になるので、壁がしっかりしていて、背が低いのが特徴で、装飾もそれほど多くはありません。ロマネスクの建物にも雨どいはありましたが、こんなに飛び出したものではありませんでした。
次の写真のようにな、ゴシック様式の建物になると、壁を支える技術が進化して、壁がかなり薄く、建物が高くなりその分装飾も増えていきました。
壁や入口、至る所に聖人や、聖書のお話を装飾し、字が読めない時代の人達に彫刻(や絵)で宗教を伝えていた時代、そびえたつ姿と、細かい装飾は、教会が特に力を入れた部分でもあります。
そのため、雨水が壁沿いに流れることによって、石の壁や装飾が浸食がしないように、雨水が壁から離れたところから排水されるようにしました。
できるだけ壁から遠ざけるため、長くなり、かなり目立ちます。その部分を装飾していったのが、怪獣のような顔のガーゴイルです。
その後、ガーゴイルよりもっと効率的な方法で排水ができるようになり、また、細長いガーゴイルが壊れて落下することもよくあったようで、ガーゴイルは必要がなくなっていくのですが、教会の装飾として生き残っていきました。
名前の由来は
ガーゴイルは、語源はフランス語の Gargouille(ガルグイユ)
ラテン語では、Gargulio → Garganta(スペイン語で 喉 の事)
スペイン語では、Gárgola (ガルゴラ)
フランス語でうがいをする事をGargariser、スペイン語でうがいをする事をhacer gárgara(アセール ガルガラ)といい、GAR が、うがいの時や、水が排水管を流れる時の”ガラガラ” という音から発生した言葉の様です。
ガーゴイルは、古代のエジプトやギリシャの神殿にもありました。
ギリシャ神話にはグリフォン(Griffon)という 鷲の頭に翼のある胴体がラオインの伝説上の生物が登場します。
スペインでは今でも、水道の蛇口の事を、グリフォといいますが、水が出るところ=蛇口の語源になったのが、この異教徒たちのグリフォン(=ガーゴイル)です。
ガーゴイルとキメラ
ガーゴイルには、2パターンがあって、
1.実際に口から水を吐き出して、排水のための物
2.排水用ではなく、単なる装飾
1をガーゴイルと呼び、2はキメラと呼ばれます。
上の写真では、下の水平に飛び出した方がガーゴイル、上に立っている方は、キメラです。
ちなみに本来キメラは、ギリシャ神話に出てくる怪物です。ライオンの頭と山羊の胴体と毒蛇の尻尾を持っているのがキメラ。グリフォンとキメラ微妙に違いますが、見た目似てますね。
装飾が怪獣みたいな理由は
1.教会の装飾というと、聖人や天使が多い中、なぜガーゴイルは怪物になったかというと、教会の中では、懺悔をして悪を清める、その悪を教会の外に吐き出すという意味合いでも、ガーゴイルが、外界への吐き出し口の役割を果たしていて、悪を吐き出すのに、その装飾が聖人や天使の姿では恐れ多い。
2.旧約聖書には、アダムとイブを楽園から追放した後、永遠の命を得てしまわないように命の木への道を守らせるためにケルビムに警備させたとあり、ケルビムは天使なのですが、顔が4つ、翼が4つ、顔は人間のような、ライオンのような、鷲のような、牛のような・・・、ちょっと怪物みたいな天使。神聖な場所を護る天使で、ケルビムの姿がガーゴイルの装飾イメージになって、外界の悪から神聖な教会を護っている。
3.異教徒の神話に出てくるグリフォン、キメラと、ケルビムの類似性。
4.悪は、教会=神の家 には入れない、悪は怖いという信者へのメッセージに怖い顔のガーゴイルが装飾された。
5.悪魔や悪を教会に近づけないように、ビックリするような怖い顔の生物を装飾した。
などなどいろいろな解釈があるようです。
怪物たち登場の ありがちな伝説
ガーゴイルがを建物の上に置かれるようになった、伝説。
昔々、パリのセーヌ川左岸にあった天然の沼地に、怪物が住んでいました。この怪物は、人や畑の動物たちを、飲み込んで食べたり、川の船を飲み込んでは、水を吐き出して洪水をおこしたり悪さをしていました。12世紀のルーアン(フランス)の街のサン・ロマノ司教は、覚悟を決めて、この怪物退治に出かけることになり、死刑判決を受けて、これ以上何も失うものもない罪人が、司教を助けるために、一緒に怪物退治に同行しました。
司教は、怪物の前で十字を切って怪物の動きをとめ、ストラ(式典の時に肩からかける帯のようなもの)で怪物の首を縛り、これ以上悪さをしないように、焼いてしまおうとしましたが、頭があまりにも硬くて残ってしまいました。そこで、この出来事を忘れないように、世の悪に対する警告の意味も込めて大聖堂の屋根に頭を置くことになりまた。
この時、勇敢に司教に同行した死刑囚は、罪を許され、その後も1790年まで、毎年サン・ロマノの日(10月23日)には、死刑囚の1人が許されるという習慣が続いたそうです。
色んな姿のガーゴイル、キメラたち
翼を持つ人です。正面からの写真がないのが残念ですが、大口開けて、ユニークな顔をしています。
鷲?でしょうか
かなりかわいい(と思う)
これは、BRUJA(魔女)と名付けられていました。
パリのノートルダム寺院のキメラたちは世界的にも有名です。火事の後どうなったのでしょうか?
古い教会だけではなく、例えば、ニューヨークのシンボル的なクライスラーのビル、よく見ると装飾として近代化したガーゴイルを見ることができます。
まとめ
もともとは雨どいとして、その装飾が伝説上の生物で、人々の罪を教会から吐き出して、教会に悪い物が入ってこないように護ってくれて、そのうちもともとの用途ではない装飾として、今はおそらく装飾と魔除けを兼ねたものなのかもしれませんね。
高いところにあるので、気づかない事が多く、気づいても「何だろうね?」で終わってしまいがちな、教会や古い修道院などに今も生き残っているガーゴイル。
ヨーロッパの教会を訪れる機会があったら、思い出して、上の方も見てみてくださいね。