≪聖遺物≫って言葉を知っていますか?
聖遺物とは
聖遺物とは、カトリック教会でとても大事にされてきた、イエスや聖母マリアの遺品や、聖人たちの遺品や、遺骨など、また、イエスの受難になんらかの関りがある物のことで、スペイン語ではレリキア(reliquia)といいます。
イエスの場合、例えば、イエスの血、磔の時に頭にかぶせられた茨の王冠の棘や、磔の十字架の一部、聖人の場合は、遺骨の一部や、ミイラ化した遺体の一部などなど、なかなかショッキングな物が聖遺物として存在しています。骨でも歯でも、皮膚でも髪の毛でもはっきり言うとなんでもいいのです。
奇跡って・・・
歯とか内臓?!
それって、本物??
Don’t worry
Be happy
ちなみに聖人とは、カトリックの信者の中でも、他の信者の模範となるような素晴らしい信者の死後、バチカンの列聖省(という管轄があるらしいです)の調査・審査で認められると、いくつかの段階を踏んで、最終的に聖人として認定されます。普通は亡くなって何十年、何百年もたってからの列聖ですが、最近では亡くなって数年で聖人になるケースもあるようです。聖人になるには、何かしらの奇跡を起こすことが条件とされています。(殉教の場合は奇跡がなくてもいい)
イエスの受難とは、イエスの人生の最後、弟子に裏切られ捕まって、裁判を受け有罪になり死刑確定、ローマ兵に痛めつけられ、十字架を背負って丘を登り、磔で亡くなるという、精神的、肉体的な苦痛のことをいいます。スペイン語では、パッシオン(Pasión de Cristo)
聖遺物はランクがある
●1級品=イエスの人生に関係のあるのもと、聖人達の遺骨や遺体の一部など
●2 級品=聖人たちが使っていた物(十字架とか、本など)
●3級品=1級品と2級品に接触のあった物(聖人の遺骨を包んでいた布とか)
1級、2級という呼び方をしていいのかわかりませんが、信者にとってインパクトのある物ほどランクが上です。
イエス関連が一番で、その後はイエスの直接の弟子の物、その後聖人の物、体全身、頭、腕、脛骨、臓器の順で、そして年代が古い物の方が価値がありました。
どうやって入手するのか
聖人伝説がある地方には、その聖人のお墓もあることが多く、その地方の聖職者に譲ってもらう、もしくは、業者から購入する、もしくは”盗む”です。
そうじゃなければ、突然聖人のお墓が発見されたり、都合よく川に流された聖人の骨が発見されたり。カトリック三大巡礼地でスペイン・ガリシア地方のサンティアゴ・デ・コンポステーラでは、9世紀に突如イエスの弟子の1人、サン・ティアゴのお墓が発見され、それから多くの人が現在に至るまでそのお墓参り(巡礼の旅)をしているのは有名な話。≪参照≫スペイン巡礼の道 カミノ・デ・サンティアゴ
キリスト教がローマ帝国から認められていなかった頃、異教徒として殉教した信者のお墓は、街の外にこっそり埋葬するしかなく、その後4世紀以降キリスト教が認められた後、そういうお墓を祀るための礼拝堂などが造られました。殉教した聖人は特に価値があるものとされ、そういうお墓から遺体を別の場所に移し、その際、遺骨が分割され、需要に応じて贈られたり、売買されたのです。
それでも足りない場合は、聖遺物詐欺。例えが悪いかもしれませんが、密売の組織のようなものが聖遺物にもあったようです。
どうしてそんなに聖遺物が欲しかったか
聖遺物には、病気を治したり、奇跡を起こしたりといった話しがつきもので、教会がそれを持つことで信者も集まり、それは、異教徒に立ち向かう時の結束力にもつながります。
また、聖遺物を手に入れたいのは教会だけではなく、王族や、貴族などの権力者もそうで、特に熱心な信者として聖遺物所有願望が生まれ、自宅に飾ったり、身に付けてお守り代わりにしたり、また宗教的なことだけではなく、所有することが、政治的にも権力の象徴になったり、王様のお気に入りになるために贈り物としても聖遺物を手に入れたりと、どんどん需要が高まります。
聖遺物の一例
色んな聖遺物があります。なかでもなかなかすごいのは、
例えば、
●イエスの血(聖血)
●磔の時使われた釘
●洗礼者ヨハネの頭
●マリアの母乳
●マリアのへその緒
●聖霊の羽
●ホセ聖人のため息(瓶詰め バチカン)
●聖霊のくしゃみ(瓶詰め バチカン)
●イエスのあごひげの1本(ムルシア/スペイン)
聖霊のクシャミ!!!!!
例をあげるときりがありません。
カトリック教会で特に大事にされている聖遺物には、
●聖骸布(トリノ/ イタリア)イエスが磔で亡くなった後の遺体を包んだ布。残っていた血液は人間のものでAB型なんだそうです。イタリアのトリノの物が有名ですが、実はスペインのオビエドには、同じく磔で亡くなった後の遺体(頭)を包んでいた布があります。
●磔の十字架の左手の部分で、イエスの手を釘で打った時の穴が残っている木片(カンタブリア/スペイン)。磔の十字架の木片は他にも存在していますが、スペインの物がサイズ的には一番大きい物。
●聖杯(バレンシア/スペイン)最後の晩餐の時に使われたらしい聖杯。
いくつも同じ聖遺物があって、大事な物はバチカン、もしくはスペインにも結構大事な物がそろっています。聖杯などは、スペイン国内にも他にも存在しているくらいです。
いったい いくつ杯があるのかしら?
Don’t worry
Be happy
フランシスコ・ザビエルの遺体
フランシスコ・ザビエルは、16世紀のスペイン人で、イグナシオ・デ・ロヨラ(スペイン人)らとともにイエズス会の創立メンバーの1人、日本にはじめて布教活動にやって来たヨーロッパ人というので有名な人。このザビエルの遺体も聖遺物。
ザビエルは、イエズス会を立ち上げた後、ポルトガル王の依頼でアジアに布教活動にやってきて、日本に1549年に上陸。日本国内で布教活動の後、中国に行き、中国で1552年に亡くなりました。弟子たちは、棺の中に石灰を入れて埋葬しますが、2か月ほど過ぎても遺体が腐敗することなく、最終的にはミイラ化して、インドのゴアに移し埋葬されました。1614年ザビエルの死後約60年後、ローマのイエズス会の総長の命令で遺体の一部をローマにという事で、右腕が切断されましたが、その時なんと切断した部分から鮮血が流れだしたのです。
遺体には腐敗処理はされていなかったのに、腐敗することなくミイラ化し、死後60年たっても鮮血が流れ出した・・・、まさに奇跡!!
そのせいかどうか、その後、1622年ローマ法王グレゴリウス15世の時に、聖人になりました。
日本ではザビエルが知名度があるのでザビエルを例にしましたが、このような奇跡の出来事が起きるのがカトリックの世界でもあります。
ちなみに、16世紀の宗教改革以降、ローマカトリックを離れたプロテスタント派では、もともとの教義にはない聖人や聖遺物などの崇拝は禁止されています。
マドリードには
実はマドリードにも、ものすごい数の聖遺物があります。
●エンカルナシオン王立修道院(17世紀)当時の国王フェリペ3世の王妃であったマルガリータの希望により建てられた王家や貴族のお嬢様用修道院。この修道院には、王妃マルガリータから寄贈された聖遺物が約740、その他にも聖人の骨や遺品などがあり、合計1000以上あるそうです。修道院内見学の時見ることができます。(月曜閉館、予約要。 2021年1月現在は、閉館中。)
●エル・エスコリアル修道院(16世紀)フェリペ2世が建てた王の夏の別荘兼、修道院兼、王家のお墓。ここには、なんと王が収集した聖遺物が7432個(!!!)あるそうです。フェリペ2世は特に敬虔な信者であり、なおかつ、時代的に宗教改革で、プロテスタント派が聖人や聖遺物を禁止したのに対し、カトリック側では逆に聖人、聖遺物などに力を入れていて、スペインは一番のローマカトリック擁護国でもあり、フェリペ2世は当時の法王ピオ5世に許可をもらって、その後尋常ではない数の聖遺物を収集しました。(エル・エスコリアル修道院は、マドリッド郊外バスで50分ほどの場所、建物内の見学はできますが、聖遺物は通常は見学できません。)
●サン・アントン教会 動物の守護聖人で有名なサン・アントン教会、ここには、恋人たちの聖人、聖バレンタインの聖遺物があります。(詳しくはまた別の機会に)この教会は、基本的には、いつでも24時間開いています。≪参照≫動物たちの守護聖人 ≪聖アントンの日≫
まとめ
世界中に、すごい数の聖遺物があります。
そして、聖遺物を納めておく箱、整骨箱(レリカリオ)も、ものすごく凝った装飾で、この箱だけ見ていても(というか、遺骨より、箱の方が見ていて)興味深い物です。
カトリックの教会に行かれたら、聖遺物があるかもしれません、注目してみてくださいね。