アトーチャ駅の≪大きな頭≫の彫刻 「Día y Noche (昼と夜)」アントニオ・ロペス

マドリードの国鉄の南の玄関口『アトーチャ駅』。出口に置かれた2つの≪大きな頭≫のブロンズ像です。

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『Día y Noche』(昼と夜)

この2つの≪大きな頭≫のブロンズ像、タイトルは『Día y Noche(Day & Night)』(昼と夜)
作者アントニオ・ロペスの孫カルメンちゃんで、生後6か月頃のカルメンちゃんがモデルになりました。

こちらは『昼』

『昼と夜』の昼 アントニオ・ロペス Luis García, CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

こちらは『夜』

『昼と夜』の夜 アントニオ・ロペス作 Luis García, CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

『昼』と『夜』の違いがわかりますか?

違いは、『昼』は、カルメンちゃんの目が開いていて、『夜』は、目が閉じています。

眠っていたカルメンちゃんが、目覚めて世の中の動きを見て、ビックリして、目を見開いています。

この作品は、スペイン開発省と国鉄RENFE が、アトーチャ駅の改装工事の一環で、アントニオ・ロペスに依頼したものです。

作者の思い

2002年から製作がおこなわれ、2008年からアトーチャ駅に設置されています。

作者の当初の予定では、大きさ(高さ)2mくらいの予定が、最終的には、約3m、重さ2000㎏という巨大な作品に仕上がりました。

そして、設置された場所は、作者の希望で駅構内、列車のホームからの出口付近でした。(現在は屋外)

「駅のホームという 冷たく無機質だと思われている場所で、列車から降りた人たちが、見落とすことなく、この子たち(作品)に出会って、優しさとハーモニーを感じてもらえるように」、という作者の配慮でした。

アントニオ・ロペスは、作品のテーマが ≪子供≫ になっているものがいくつもあり、

「子供は、驚異的な存在だ、どうしてみんなもっと子供の肖像画を描かないんだろう」というくらい、彼の作品のベースの一部になっています。

アトーチャ駅は、1949年、(絵を学ぶために)マドリードに降り立った時の玄関口だったところ、そこに自分の作品を展示できるのは、感慨深いです。

巨大で存在感があるけれど、威圧感はなく干渉もせず、まるで足元(地面)から生まれたような、そこを通り過ぎる人たちとの相互作用で生きている作品です。

比喩的な彫刻は、わかりづらいかもしれないけれど、びっくりしないで、作品が伝える思い(作者の思い)を感じてもらえたらうれしいです。

アントニオ・ロペス

作品の設置は、アントニオ・ロペス本人の立会いのもと行われ、

「控えめに落ち着いたよね?」というユーモアのある、満足な感想を残しました。

その後2010年、またアトーチャ駅の改装工事の際、駅構内のはじめの場所から、現在の到着出口の外に設置されました。

それまでは、駅構内のホームの出口だったので、列車を利用する人しか近づくことができませんでしたが、現在の場所は、列車利用者だけではなく、だれでも鑑賞できる所で、真横に並んで一緒に写真も撮れる場所です。

駅構内の物だったのが、今度は、街の景色の中に溶け込んで、あたたかい気持ちにさせてくれる、不思議な作品です。

この作品の制作にあたって、 列車の発着とともにある ”時間の流れ” という事もコンセプトになっていたそうで、現在の場所に置くことで、眠って、起きて、昼と夜という時間の流れと、日の当たり加減や、雨でぬれていたり、上の写真のように、雪の中にあったり、時間と季節も感じられます。

アントニオ・ロペス

アントニオ・ロペス Manuel Castells Clemente, CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons

アントニオ・ロペスは、1936年、カスティーリャ・ラ・マンチャのトメジョーソに生まれ、1950-1955年マドリードの王立サン・フェルナンド・美術アカデミーで学び、その後 同アカデミーのメンバーの1人に選出され、スペイン国内はもとより、世界的に評価の高い、現在のスペインを代表する画家・彫刻家です。

1985年には、アストゥリアス皇太子賞受賞、1993年ソフィア王妃芸術センター、2008年ボストン美術館、2011年ティッセン・ボルネミサ美術館、2013年には日本でも個展が開催されました。(その他多くの国の美術館で彼の作品は展示されました)

スペイン前国王 ≪ファン・カルロス1世の家族の肖像≫(マドリード王宮内展示中) を描いたのがアントニオ・ロペスで、制作に20年の歳月をかけ2014年に完成しています。

また、2008年には、『Madrid desde torres blancas』という絵が、オークションで€1,744,000(約2億2千万円)で落札され、この金額は、生存中のスペイン人画家の作品の最高額の記録でした。

アトーチャ駅

マドリードには北と南、ふたつの大きな鉄道の駅があります。

そのうちの、南の駅がアトーチャ駅で、スペイン国鉄RENFEや、マドリード近郊線CERCANIAS、そして地下鉄METROが乗り入れています。

アトーチャ駅 Photographer: Georg Himmrich  Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0

旧駅構内は、植物園になっていて、 ”ヨーロッパの素敵な駅ランキング” にも名前があがる、個性的な駅です。

アメリカ、アジア、オーストラリアからの200種類以上の約7000年本以上の植物からなる4000㎡に及ぶ熱帯植物園は、天井がガラス張りになっていて、自然の光が差し込み、また平均温度22-24℃、湿度60-70 %にコントロールされています。

植物園以外にも、カフェやレストランも植物園のまわりにあります。

まとめ

アトーチャ駅は、マドリードの街の中心地、人気のプラド美術館やソフィア王妃芸術センターからも近いので、アトーチャ駅を利用する予定がない方も、アントニオ・ロペスの『Dia y Noche』、巨大な頭だけど、なんともほっこりする作品ですので是非、そして、駅構内の植物園も素敵なので、よかったら覗いてみてくださいね。