美食の国スペイン パエリアのお話

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スペインでいちばん有名な料理

スペインで有名な いかにもスペインらしいものトップ3, パエリア闘牛・フラメンコ。闘牛とフラメンコに関しては、タイミングを逃してしまったり、個人の興味の度合いにもよりますが、パエリアだけは絶対に…!! という方が多いと思います。日本人の私たちにとっては、米料理は食べやすく、特に海外での慣れないメニューの中にあって、ほっと落ち着く料理ということもあり大変人気があります。

パエリア の 意味

パエリアは、スペイン語では ” PAELLA ”で、本来の意味は、一種の フライパン (広く浅く、二つまたはそれ以上の取っ手が付いている)のことです。フライパンはスペイン語では、SARTÉN というのですが、古いラテン語ではフライパンのことを PATELLAとよび、それが語源になっているという説が一般的です。

パエリアの本場バレンシアは、米の産地

スペインの南東部に、マドリッド、バルセロナに次ぐスペイン3番目の都市 バレンシアという地中海に面した港湾都市があります。そのバレンシアから約15km離れたところに、アルブフェラ国立公園があります。スペインでいちばん大きな湖があり、約300種類以上の絶滅危惧種鳥類の繁殖地で、または越冬地としても保護されています。その恵まれた自然環境の総面積21,000ha のうち約14,000haで米栽培が行われていて、この地方はスペインのなかでも有数の米の産地なのです。

スペインで本格的に米栽培が始ったのは8世紀、イスラム教徒軍がこの地を征服し、支配権を握っていた時代に、この地方特有の湿地帯が米栽培に適しているということで始まり広がっていきました。イスラムの人達も米を食べる習慣があったのと、米栽培、畑仕事に携わった地元の農民たちの、手軽に準備ができる簡単料理が、パエリアのはじまりだったのです。

サフランを持ち込んだイスラムの人達

その後イスラムの人達は、パエリアに欠かせないもう一つ大事なものを、スペインで栽培しはじめました。それがサフランです。サフランの栽培をスペインで始めたのも8世紀、米栽培が本格的にスペインで始まった同じ時代です。

サフランはアヤメ科の植物で、秋に紫色の花を咲かせます。花の中に紅色の雌しべがあり、それを摘み取って乾燥させたもので、独特の味と風味があり、世界でも特に高価な香辛料のひとつです。サフランの名前は、アラブの言葉で、”黄色 ” パエリアのあの黄色はこのサフランによるものです。米とサフラン、このふたつがここで出会い、また一歩現在のパエリアに近づいていきました。

とはいえ、当時のパエリアは、皆さんのイメージにある華やかなパエリアとは違い、すぐに手に入る野菜や肉などを入れて調理された、もっと素朴な料理でした。

15世紀末のコロンブスの新大陸到達後、スペインにはそれまで存在しなかった野菜などが持ち込まれ、パエリアに使われる野菜の種類なども、その後増えていきました。

初めてパエリアを食べた日本人

時代は流れ16世紀、日本の九州からキリシタン大名の名代として、4人の少年たちが、天正遣欧少年使節としてヨーロッパに送られ、スペインのフェリペ2世という王様との謁見もかないました。その後使節団がイタリアに渡るため出航したのがバレンシアのとなり、アリカンテの港で、この時にパエリアがふるまわれたという記録があるそうです。

バレンシア風パエリア 絵文字にもこだわり?

バレンシアの人達は、この米料理パエリアに、深いこだわりがあると言われます。今現在スペインでも、世界的にも人気があるのは、シーフードパエリア、もしくはシーフードと肉の入ったミックスパエリアなのですが、バレンシアのオリジナルのパエリアは、鶏肉、ウサギの肉、モロッコいんげん、Garrafónとよばれるインゲン豆の一種などが入っているのが特徴です。スペインを代表する料理である以前に、バレンシアの郷土料理という思い入れが強く、レシピに関しても、しっかりとその伝統を受け継いできています。バレンシアの人に言わせると、「山の幸と海の幸がごちゃ混ぜになってるのは、パエリアではなく、ごちゃ混ぜご飯」なんだそうです。

バレンシアの人が最も嫌うパエリアは、グリーンピースがいかにもお飾り風に入っているもの。かつて、パソコンや携帯の絵文字に ついにパエリアが登場した時、アップル社の絵文字パエリアには、グリーンピースが乗っていて、地元では大ブーイングだった(!?)そうです。現在の絵文字には、グリーンピースありません。🥘

世界パエリアの日

2018年からバレンシアでは、9月20日を【世界パエリアの日】と定め、パエリア発祥の地バレンシアの宣伝活動を行うと共に、サッカーのワールドカップのような、パエリアワールドカップが開催されています。今年も世界から8人のシェフたちが参加し、なんと日本からも参戦、本場のバレンシアのパエリアに日本のパエリアが挑むことになります。米食文化の日本のパエリアの健闘を祈りたいと思います。

郷土料理から世界一有名なスペイン料理になった

スペインではもともと台所仕事は女性が中心という習慣でしたが、そのスペインにあって、パエリアは基本的には男の料理、お父さんたちが腕を振るって、家族でパエリアを囲むというのが、典型的なスペインの週末の昼食風景です。昔は、それぞれのお皿に取り分けたりせず、木製のスプーンで直接パエリアを食べていました。

そんな、素朴な家庭料理だったパエリアですが、今では、企業のビジネスランチにパエリアを食べたりパエリア専門のレストランもたくさんあります。“ パエリア ”は、インターネットでの検索回数、年間800万回という、人気料理です。

伝統的なパエリア以外にも、シーフードパエリア、ミックスパエリア、イカ墨のパエリアなど色んな種類のパエリアがありますので、お好みのパエリアを、お友達や家族、大好きな方々とどうぞ味わってくださいね。

スペインでパエリアを食べる時の、ちょっと注意点

・パエリアは是非パエリア専門店で食べることをおすすめします。これだけの人気料理なので至る所でパエリアはありますが、専門店以外のものは、冷凍をレンジで温めただけ….なんていうのもあるので、気を付けてください。(もちろん専門店以外でもおいしいパエリアにめぐる会える時もありますよ)シーフードパエリアを食べる場合は、専門店もしくは、新鮮なシーフードのレストランならかなり期待できます。

・パエリアは、基本的には2人分からの注文です。とうぜん注文後に調理をはじめるので、少なくとも20分くらいはかかります。何か前菜を頼んでつまみながら待ちましょう。ここで失敗しがちなのが、待っている間についパンを食べすぎてしまい、お目当てのパエリアが来る前におなか一杯なんてことになるので、ほどほどに。

・バレンシアが本場のパエリアですが、それ以外、各地方によって仕上がり具合が若干違います。バルセロナでは、他の地方に比べるとちょっと水分多めの仕上がりになっているところが多い印象です。味は問題なくおいしいので、好みの問題ですね。