サフランとスペインの『ラ・マンチャ』

スペインは世界第2位のサフラン生産国です。

品質的には世界1とも言われる、スペインのサフラン雑学です。

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スペインと言えばパエリア、パエリアと言えばサフラン

サフランは、日本ではあまり一般的ではない香辛料ですが、スペインでは結構使います。

サフランを使ったスペイン料理で、世界的にも有名なのがパエリア。

パエリアには色んな種類がありますが、パエリアというと誰もが黄色いお米を想像する、あの黄色い色はサフランの色です。

パエリアだけではなく、魚介類の煮込みやスープなどにも使われ、色だけではなく、香りと独特の風味が特徴です。

サフランって、いったいどんな物なのでしょうか?

サフランは花の雌しべ

サフラン(Crocus sativus)は、アヤメ科の球根の植物で、観賞用のクロッカスの仲間です。

この黄色い花はクロッカス(観賞用)です。

クロッカスは春に、紫、白、黄色の花を咲かせ、サフランの花は、紫色で、秋に咲きます

その花の紅い雌しべの部分を摘み取って、乾燥させたものが、香辛料のサフランです。

3本ある紅い雌しべを、摘み取って乾燥させたものが香辛料サフラン

紅い雌しべですが、水に浸けておくと黄色になり、独特の香り、風味のある香辛料として、お料理に色を付け、香り付けをするために使います。

サフラン生産で有名な国

サフランの生産で有名なのは、イラン、スペイン、インドですが、世界のサフランの生産量の半分以上はイラン産です。

生産量は負けているのですが、長い歴史のあるスペインのサフラン産業、その品質は世界から高い評価を受けています。量が少ない分、希少価値があるということです。

サフランの値段

1kgのサフランを生産するためには、約180,000~200,000の花が必要です。

花の収穫、雌しべの摘み取りと、全て人の手で行われるもので、ものすごい手間がかかり、人件費の分値段も上がってきます。

世界で高価な香辛料と言われるのが、サフラン、バニラ、カルダモンの3種で、なかでも断然高価なのがサフランです。

カルダモン
バニラ
サフラン


サフランの価格は、その年の花の収穫量や生産地によっても差が出てしまい、€800~€3,000/kg、小売り価格はその約10倍以上になってしまう事もあります。

スペインでは、一般のスーパーや市場では、小さなマッチ箱くらいの大きさのパッケージ1g入りで、€5~€15くらいで売られています。

値段に大きく差が出る理由

①生産国によって、生産方法、商品化、販売に至るまでの管理の仕方が違っているため。

②生産国によって、人件費、税金などの差があるため。

③花の収穫量と状態も自然の物なので、気象条件に大きく左右されるため。

④サフランは花の雌しべですが、雌しべの上の方の紅い部分(柱頭)だけが色が出て、香りがあります。
ただ、サフランにもいろいろランクがあって、柱頭だけを製品にしたもの、もしくは、その下の花柱といわれる雌しべの下の方の白い部分も一緒になっているものがあり、花柱の割合が多くなれば、その分価格もさがります。

サフランの収穫

サフランは、スペインでは10月の中旬から11月の初めにかけての、約2週間です。

開花すると朝からどんどん花を摘み取り、籐のかごに花を集めます。

花摘みというと、なんだか楽し気な印象ですが、花は地面から10㎝位のところに咲いているので、中腰で長時間作業を続けます。

その後すぐに花と雌しべの分離作業をする場所に運ばれ、できるだけ花が重さでつぶれないように、湿気のない場所で広げられ、雌しべを摘み取っていきます。

乱暴に扱うと雌しべが中途半端なところで切れてしまいますので、細心の注意を払いながらの手作業です。

雌しべを分ける際、上の方の紅い部分だけを集めた物が高品質とされるため、その分別作業も一緒に行われます。

そして摘み取った雌しべを乾燥させ、最終的にパッケージ作業。

摘み取りと乾燥作業は、いまだに経験者の長年の勘に頼るところが多く、品質を管理する上で大事なファクターになっています。

スペイン全体のサフランの生産量は、約2トン(=2,000kg)、1㎏を生産するのに約200,000の花・・・という事は、200,000x 2,000=4億の花? と、莫大な数の花摘み+雌しべ摘み取りを2週間で行います。 

輪作(同じ畑を何年も使えない)

そして、もうひとつ特筆すべきことは、サフランは【輪作(りんさく=同じ土地に別の性質の農産物を何年かに一回のサイクルで作っていく方法)】と言って、栽培する場所を数年置きに替えていく必要があります。

サフランの生産を長く同じ場所で続けてしまうと、土地が枯れてしまうので、周期的に替えて、土壌の栄養バランスが取れるようにしていきます。

その後同じ場所でサフランを栽培できるのは、大体10年~15年後、その間は、サフラン以外の農産物を作り、サフラン栽培にはまた違う土地が必要になります。

サフランのランク

サフランにもいろいろランクがあり、イラン産のもので、最高級ランクは、SARGOL(サルゴル)、スペイン産の最高級ランクは、COUPÉ(クーペ)と言います。

どちらも雌しべの先の紅い部分だけ(柱頭)を乾燥させたもので、強い染色力と香りがあります。

スペイン『ラ・マンチャ』のサフラン

サフランの栽培の歴史自体は、紀元前数千年まえからの歴史があるようですが、スペインで本格的にサフランを栽培するようになったのは8世紀、アラブ人がイベリア半島に持ち込んだ物でした。

スペインではサフランをアサフラン(Azafrán)といい、アラブの言葉で ”黄色” という意味です。

スペインの中でも特にその気象条件がサフラン栽培に適していたのが、スペインの中央部に位置するラ・マンチャ(La Mancha)地方。

この地方で風車でも有名なコンスエグラ(Consuegra)では、毎年10月の花の収穫の時期にはサフランの花まつり(La Fiesta de la rosa del Azafrán)が行われます。

1963年から行われているこのお祭りは、10月の最終週末に、風車の村を舞台に、伝統的な地方のフォークダンス大会、サフランの花摘みコンクールなどが催されます。

またラ・マンチャ地方は、マンチェゴチーズ(Queso Manchego )、そしてスペインで一番のブドウの生産地でもあり、チーズやワインといった郷土の特産品の試食、販売なども同時に行われます。

ラ・マンチャと言えばもう一つ有名なのが、ドン・キホーテ、作品の舞台として登場するのが、この地方という事で、サフラン、マンチェゴチーズ、ワイン、ドン・キホーテは、この地方の観光アピールポイントになっています。


『La Mancha』のサフランは原産地呼称制度で保護されています(DOP)

スペインの原産地呼称制度は、商品の生産地、生産方法、カテゴリーなどを明確にして、生産者と消費者を保護する目的で、もともとはワイン業界から始まり、現在は、オリーブオイル、チーズ、ハチミツ、生ハムなど、またいくつかの香辛料も同じように品質管理をしています。

その一つが『La Mancha』のサフランです。

サフランは、昔から高価な値段で売買されていて、その偽物も出回り、サフランに見せかけた他の植物の繊維を混ぜたりして量をごまかしたり、悪質な業者が後を絶ちません。

その為、消費者だけではなく、生産者側も被害を受けます。

この原産地呼称制度(Denominación de Origen Protegida)は、そういった問題の対処方法の一つにもなります。

『La Mancha』のサフランは、


①Crocus sativusの雌しべの柱頭の部分のみ

②アルバセテ(Albacete)、シウダーレアル(Ciudad Real)、クエンカ(Cuenca)、トレド(Toledo)で栽培されたもの

③花を育てる環境条件の中でも特に大事な、輪作が行われ、4年ごとに畑を替えること

④花摘み、雌しべ分離、乾燥もこの地方の伝統的な決まったやり方で行われること

⑤最大100g以内でパッケージされていて、それ以外の販売方法では、販売しないこと

⑥パッケージから1年以内の物であること

これらの条件のもと、スペイン産最高品質のサフランを生産しています。

高価な香辛料ではありますが

例えば、1gが€15のサフランを使ってパエリアを4人分作るとします。

4人分のパエリアに使うサフランの量は、ひとつまみ(100㎎~150㎎)です。
計算していくと、1人分のサフラン代は60円前後になります。

香辛料としては高価ではありますが、味の決め手となる大事な食材と考えると、納得できる金額ではないかと思います。

サフランの効能

サフランは、料理に使うだけではなく、薬用にもつかわれ、鎮静、鎮痛、消化作用があり、体を温め、気持ちを落ち着かせるといった、効能があるんだそうです。

中世のヨーローッパでは、ペストの治療薬と考えられた時代もあったようです。

古代、羊皮紙を使っていた時代には、白い紙の色が視力に悪影響があると考えられ、サフラン水で染色していた国もありました。

使用方法

サフランの染色成分は、水溶性なので、料理に使う際は先に水(ぬるま湯)に浸しておくと鮮やかな色がでます。少なすぎると染色効果は落ちますが、入れ過ぎてもあまり効果は上がらないので、先程話したように、4人分のパエリアに一つまみ位です。

香りも強いので、色だけではなく、好みの香り味になったら、それが適量です。

(普通に料理に使う量なら全く問題はありませんが、5g以上の摂取は危険なのだそうです。また、妊婦さんや授乳中の方は注意が必要とのこと。)

サフランを使った料理

ブイヤベース

●パエリア
●リゾット
●ブイヤベース
●サフランライス
●スペイン風肉団子煮込み
●サフランティー
などなど、サフランティーは、雌しべ5~6本カップに入れてお湯を入れるだけ、ハチミツを入れてもいいし、優しい色と香りでホッとします。

それ以外のお料理はどれも大体一つまみ、いつもの魚介類のスープがこの一つまみのサフランで、全く違ったものになります。

肉料理のソースにも使いますが、シーフードや、米料理の方がなじみやすいので、試してみてください。

スペインのお土産にもお勧めです

サフランは€10前後で買えて、軽くて、スペインのお土産にもお勧めです。

かわいらしいガラスの小瓶に入ったものなどもあります。

もしかしたら、お土産にもらったけど、使い方がよくわからなくて、キッチンの引き出しに入れっぱなしのサフランありませんか?

これを機会にぜひサフラン使ってみてください。