2021年7月、マドリード州に新しい世界遺産が認定されました!!
「El paisaje de la Luz(光の景観)」と名付けられた世界遺産はマドリード市のど真ん中。
プラド美術館があるパセオ・デル・プラド(プラド散歩道)~レティーロ公園に至る約190ヘクタールに及ぶこの地区の約75%が緑地であり、歴史と文化と自然(緑地)の織りなす景観として今回新たに世界遺産に登録されました。
文化的景観
今回世界遺産に登録が決まったこの地区は、例えば、パセオ・デル・プラドは王室礼拝堂でもあったサン・ヘロニモ・レアル修道院の牧草地だっところで、すでに16世紀にマドリードに首都が置かれた頃から、緑地を導入した都市開発が行われて、街の人達の憩いの場所として環境整備がすすめられた場所でした。
こういう事例はヨーロッパの首都の中では一番初めで、マドリードからイベリア半島そしてアメリカ大陸にも、こういった人々の憩いの場所としての並木道の開発がその後導入されていきました。
17世紀になると王家のセカンドハウス的目的でブエン・レティーロ宮殿とその庭園や、娯楽の場所として大きな池が設けられました。現在はレティーロ公園として市民に開放されているこの緑地帯、面積は約118ヘクタール。
パセオ・デル・プラドとレティーロ公園は、現在でもマドリードの大事な酸素供給源となっている緑豊かな場所です。
18世紀には、マドリード市長王と呼ばれるほど、街の開発と美化に力を入れた国王カルロス3世の命令により、この広大な土地の大改革が行われ、それまでより多くの街路樹を植え、ますます緑地化をすすめました。
カルロス3世の時代には、それまで別の場所にあった植物園もパセオ・デル・プラドに移転し、王立植物園として1774年に運営が始まりヨーロッパ原産の植物だけではなく、アメリカ大陸からの植物の栽培も始めたことでも有名です。王立植物園の面積は約8ヘクタール、現在も人気の、プラド美術館の横にある植物園です。
プラド美術館はもともとは自然科学博物館になる予定だったもので、これもカルロス3世の時代に建てられた建物です。
その他にもレティーロ公園内の高台には王立天文台、また街の装飾のために、シベレスやネプトゥーノといった華やかな噴水、街の入り口の一つとしてアルカラ門など、マドリード観光の中心地にあたるこの地区は、18世~19世紀にかけてすでに現在の街並みの基盤を固めていました。
美術館通り
またこの周辺には、1819年に開館したプラド美術館だけではなく、
1990年開館したソフィア王妃芸術センター(18世紀カルロス3世の時代に建てられた、マドリードの総合病院だった建物を再利用した現代美術の美術館、ピカソのゲルニカがある事でも有名)、
1992年に開館したティッセン・ボルネミッサ美術館(ドイツ、ハンガリー系のティッセン・ボルネミッサ男爵のコレクション、コレクションを相続した男爵の子息は、かつてミス・スペインだった女性と結婚し、その縁で最終的にコレクションはスペインに。13世紀から20世紀にかけての幅広いジャンルの作品、約1000点にもおよぶ個人コレクションでしたが、その後スペイン政府が買い取りました。)
といった有名美術館が、それぞれ徒歩圏内にあります。
※この3つの美術館のチケットがまとめて一括で買えて、なおかつ別々に購入するより20%安くなる共通券=パセオ・デル・アルテ(購入日より1年有効、入場はそれぞれの美術館1回)もあります。
(また3館とも、曜日によって、時間帯によって入場無料になる時があります。)
その他
他にも有名な建物や博物館などがあります。
●シベレス宮殿(20世紀の初めに建てられた旧中央郵便局、2007年からマドリード市庁舎、展望台に登ることもでき、展望テラス付きのカフェやレストランもある、マドリードのエンブレム的建物)
●スペイン銀行(19世紀の建物。正面の時計は1891年イギリス製、直径3.95m、重さ177㎏)
●海軍博物館(15世紀から現在に至るまでのスペイン海軍の歴史や、地図、地球儀、武器などの展示がある博物館)
●1808年5月2日の英雄たちの慰霊碑(ナポレオン軍から街を護るために戦って亡くなったマドリード市民の英雄たちの慰霊碑、オベリスクの前には、追悼の火が灯されています)
●マドリード証券取引所(19世紀に建てられたネオクラシック様式の建物)
●カイシャフォルム(かつての電気会社の建物を使った文化センター、展示会や講演会、様々な文化活動が行われています、館内のカフェも居心地がいい静かなスペース) カイシャフォルムの横の建物の壁には、約15,000本の植物を使った壁の垂直庭園もあり人気の場所です。
など、まだ他に見どころがいっぱいの地区です。
マドリード州の世界遺産
今回の登録で、マドリード州の世界遺産は(文化遺産4ヶ所、自然遺産1ヶ所)合計5ヶ所になりました。
●「エル・エスコリアル修道院と王室用地」(マドリードから北西約50㎞、16世紀に建てられたスペイン王家の夏の別荘、修道院、王家の霊廟などのある建物)
●「アルカラ・デ・エナーレスの大学と歴史地区」(マドリードの東約30㎞、世界初の計画的大学都市、ドン・キホーテの作者セルバンテスの生家がある街)
●「(王宮と庭園を含む)アランフェスの文化的景観」(マドリードの南約60㎞、16世紀~18世紀にわたって作られたスペイン王家の春のお城、と広大な庭園や街並み)
●「モンテホのブナ林」(マドリードの北東約90㎞、”カルパチア山脈とヨーロッパ地域の古代及び原生ブナ林”、ヨーロッパ18ヵ国にまたがる自然遺産の一部がマドリード郊外のHayado de Montejo)
この4ヶ所がすでに世界遺産に登録されていて、今回の「光の景観(レティーロ公園-プラド通り)」は、歴史と文化と自然の融合という事で、世界遺産(文化遺産)に登録されました。
スペイン全体では、これで49カ所の世界遺産が登録されたことになり、世界でイタリア、中国に次いで3番目に世界遺産の多い国です。
マドリードは世界的見ても緑の多い都市、どうぞマドリードの歴史と文化を、緑一杯の環境の中で満喫してください。
(安心して海外に行ける日が、はやく戻って来ますように!)
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