【レティーロ公園】見どころいっぱいの都心のオアシス 珍しい植物やかわいらしい動物、無料の美術展示会場もあります

マドリードの中心部にある巨大なレティーロ公園

かつては、マドリードでいちばん空気がきれいな場所と言われた公園です。

一歩足を踏み入れると、森の中?というくらい緑いっぱい。

とても大きな公園なので、どこをどう歩いていいのやら、地元に住んでいてもたまに迷います。

今回は、1時間くらいで散策できるように、見どころをまとめてみました。

ガラスの宮殿 Felipe Gabaldón,
CC BY 2.0 Wikimedia Commons

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レティーロ公園の簡単な歴史

プラド美術館(レティーロ公園のすぐ近く、徒歩3分)のすぐ横にあるサン・ヘロニモ・レアル教会は、16世紀の初めに建てられた、スペイン王家の礼拝堂でした。

歴代の王たちがこの教会を訪れる際、クワルト・レアルと呼ばれた王家の宿泊施設として使っていた建物が、この教会に隣接してかつては存在しました。

スペイン国王フェリペ4世は、かつてのクワルト・レアルとその周辺の敷地を王のセカンドハウス兼レクレーションの場所とし、王の寵臣であったオリバーレス伯爵がその指揮にあたり、大々的な工事が行われたのが17世紀(1630年~1640年)、その結果出来上がったのがブエン・レティーロ宮殿とその周りの庭園です。

1637年頃 ブエン・レティーロ宮殿と庭園

セカンドハウスと言っても、王がこの宮殿に滞在したのは夏の短い期間のみでしたが、王が十分に楽しめる場所を提供するために、さまざまな趣向をこらし、その中には当時の宮廷画家であったベラスケスが装飾を担当した諸王国の間と呼ばれる部屋や、敷地内に大きな池を造って、豪華な装飾を施したボートで舟遊びをしたり、また乗馬を楽しんだりと王の憩いの場所でした。

レティーロとは、引退する、隠居するというような意味があり、マドリードのアルカサール(現在のマドリードの王宮の前身)と言われた王宮より自由に、国王のリラックスした時間を確保するための、贅沢な場所だったのです。

フェリペ4世の後は、カルロス2世、フェリペ5世とこの場所を同じ目的で、とくにフランス生まれのフェリペ5世はレティーロをお気に入りでした。

フェリペ5世の時代1734年にマドリードのアルカサールの火事で王宮を再建することになり、その時からブエン・レティーロ宮殿がスペイン王家の正式な王宮として使われた時代もありました。

フェリペ5世のあと、1759年に継いだカルロス3世は、逆にブエン・レティーロ宮殿をあまり好まず、火事で焼けた王宮の再建後(1764年)は、またすぐにマドリードの王宮に居住地を戻し、ブエン・レティーロ宮殿をほとんど使用することはなく、1767年に庭園は市民に開放されました。

またこの時代、レティーロの敷地周辺には、王立植物園(プラド美術館の隣)、自然科学博物館(現在のプラド美術館の建物)、王立天文台、王立磁器工場などの施設が設けられ、国王のレクレーションの庭園の様相が変わっていきました。

その後ブエン・レィーロ宮殿の利用の機会は少なくなり、19世紀初め、ナポレオン軍がマドリードに侵入した時は、レティーロはナポレオン軍の兵舎、基地として占領され、

ナポレオン軍が去ったあとも、イギリス軍によって磁器工場なども含め爆破されてしまいます。

その後フェルナンド7世の時代、ブエンレィーロを再建する経済力はなく、イサベル2世の時代(19世紀)国に売却され、いくつかの建物(カソン・デル・ブエン・レティーロと、諸王国の間)だけを残し、古い壊れた建物は撤去されてしまいました。

17世紀から現在まで残っているのは、大きな池とカンパニージャ(鈴)の池のみです。

レティーロ公園を1時間くらいで散策

時間があれば、途中でお茶でも飲んで休憩しながらゆっくりしたいところですが、今回はサクッと有名なところだけ見れるコース案内です。

Cuesta de Moyano (露店の本屋さん)

ここはまだレティーロ公園の外ですが、プラド美術館の横の王立植物園の横の坂道沿いには、露店の本屋さんが並んでいます。

新しい物から、古いものまで、色んな本が並んでいて、外のテーブルの上の本などは、1ユーロくらいで買えるもの、その他ブックマーカーや、ちょっと素敵な小さなデッサンなど、見てるだけでも楽しい通りです。子供向けの絵本などもあります。

雰囲気を楽しみながら、この辺りから散策をはじめるといいと思います。

坂道を登りきって、正面のバスが通る道を渡ったら、正面にレティーロ公園の入り口が見えてきます。

堕天使の噴水

そのまままっすぐ登っていくと、正面に見えてくるのが堕天使の噴水(Fuente de Ángel Caido)

天使の彫刻はたくさんありますが、堕天使の彫刻は、ヨーロッパには2つしかありません。

よく見ると、体に蛇が巻き付いています。

台座の怪獣(?)にも注目してくださいね。

どの角度からみても絵になります。

個人的にこの彫刻は大好きな作品。

堕天使の噴水は、別の記事で詳しく紹介しています。

ガラスの宮殿

この建物は、1887年建築家リカルド・ベラスケス・ボスコによって建てられ、当時行われたフィリピンの植物展示会の会場として、温室のイメージで造られたもの。

1851年世界初の万国博覧会の会場となったロンドンのハイドパークに建てられたクリスタルパラス(水晶宮)の影響をうけて建てられた、ガラスと細い鉄骨の繊細な建造物です。

宮殿と言うよりは展示会場で、現在も頻繁に絵画や写真などの展示会が行われています。

展示会は入場無料で、展示がない時も館内に入ることが出来ます。(悪天候の日、展示の準備をしている時などを除く)

展示会をちょっと見たり、前の池の周りを一周しながら宮殿の写真を撮ったり、レティーロ公園内でいちばん優雅な建物です。

池には、亀やガチョウ、黒鳥などの動物もいますよ。

ベラスケス宮殿

こちらの建物もガラスの宮殿と同じ建築家、リカルド・ベラスケス・ボスコの作品で、1883年にレティーロ公園で行われた、鉱業・冶金芸術・陶器・ガラスなどの展示会の会場として建てられた物。

ベラスケスと言うと、17世紀のスペイン人画家ディエゴ・ベラスケスが連想されますが、画家ではなく、19世紀のスペインで活躍した建築家リカルド・ベラスケス・ボスコの名前が建物の名前として採用されました。

ガラスの宮殿もこのベラスケス宮殿も 装飾のタイルは双方ともに、ダニエル・スロアガの作品です。

どちらの建物も、現在ソフィア王妃芸術センターの展示会場として使われていて(無料)、

建物だけではなく、美術品の鑑賞も無料で気軽にできるというのも、ちょっと得した気分です。

※ベラスケス宮殿の中にはトイレもあります。(入って右側)

アルカチョファの噴水

アルカチョファは、アーティチョークの事。

上の水がでるところが、その形に似ていることからそう呼ばれます。
(ちなみにスペインでは、シャワーヘッドの事もアルカチョファとよびます)

この噴水は、18世紀の国王カルロス3世の時代、街の美化促進の一環で造られた噴水のひとつで、国王のお気に入りの建築家ベントゥーラ・ロドリゲスの作品です。

アルカチョファの下にいるのは、キューピッド。

その下の方には、海の神トリトンと、海にすむ女神ネレイスが、熊とマドローニョ(山イチゴ)の図柄のマドリードの紋章を支えています。

カルロス3世は、マドリード市長王と言われたくらい街の改革に力を入れた王で、マドリードの現在の街並みはこの王が作り上げたと言ってもいいくらいです。

もともとは、現在のアトーチャ駅の近くにあったアトーチャ門の前に設置されたいた物ですが、19世紀に入り交通量のふえた噴水周辺の整備のため、レティーロ公園の現在の場所に1880年に移転されました。

1986年から、アトーチャ駅前のロータリー(オリジナルの噴水が昔置かれていた近く)に、この噴水のコピーも設置されています。

アルカチョファの噴水コピー(アトーチャ駅前)
losmininos, CC BY-SA 2.0 via Wikimedia Commons

(左手の上に彫刻がのっている白い建物は、現在農業省の建物ですが、この建物もガラスの宮殿、ベラスケス宮殿と同じくリカルド・ベラスケス・ボスコの作品です)

噴水の作者ベントゥーラ・ロドリゲスは、他にも多くの作品を残しましたが、サッカーのレアルマドリードとアトレティコデマドリードでも有名な、シベレスの噴水とネプトゥーノの噴水も、彼の代表的な作品です。↓↓↓↓↓↓

大きな池(ボート乗り場)

17世紀、フェリペ4世のために造られたレティーロ、その当初からあったこの池では、きれいに装飾された船を浮かべて王侯貴族が舟遊びをしたり魚釣りをしたり、当時は池の真ん中に小さな島をつくり、そこを舞台に音楽会や、海戦のようすを演じた劇などを上演したりと、王のレクレーションの心臓部だった池です。

いけの大きさは、280m x140m 、深さは1番深いところで1.80mです。

かつての様子が下の絵からうかがえます。

1820年ごろのレティーロの大きな池

現在は、ボート乗り場があり、自分で漕ぐ貸ボート(45分間€6、週末と休日は€8)、もしくは、太陽熱で動くボート(15分間€2)が、10時~14時、16時~日暮れまで楽しむことができます。

池の正面には、1922年に完成した、19世紀のスペイン国王アルフォンソ12世のモニュメントがあります。国王が亡くなったあと、王妃マリア・クリスティーナの希望で造られたモニュメントです。

この池の周辺には、カフェテリアや、飲み物やアイスなどを売っている売店もあり、またギターやアコーデオンなどの楽器を奏でるアーティスト、週末は紙芝居や人形劇などのグループがいたりと、公園内でも特に賑やかな一角です。

亀や、魚も住んでいる池で、かつて重さ12㎏、大きさ1m以上のマルガリータと呼ばれた人気者の鯉もいたそうです。

今まで何度も清掃のために水を抜いていますが、掃除のたびにものすごい量のごみと、変わった落とし物が発見されています。サングラスや携帯電話、盗まれたと思われる財布、バルの椅子や机、スーパーのカート、中身が空っぽになった金庫、骨壺まで発見されたとか。

出口へ その1 アルカラ門の方へ

池の前を奥まで行くと、ガラパゴスの噴水です。

この噴水は、国王フェルナンド7世が娘イサベル(後のイサベル2世女王)の1歳の誕生日を記念して贈ったものです。

イルカや亀やカエルの彫刻が印象的な作品です。

この噴水を抜けるともうすぐ出口、出るとアルカラ門が見えてきます。

また地下鉄2号線RETIRO駅もすぐ近くにあります。

ガラパゴスの噴水
Håkan Svensson (Xauxa), CC BY-SA 3.0
via Wikimedia Commons

出口へ その2 プラド美術館の方へ

プラド美術館方面へは、大きな池の奥まで行かず、アルカチョファの噴水から大きな池に近づいて写真を撮ったあと、ハシント・ベナベンテのモニュメント→パルテレ庭園→フェリペ4世の門の方へ進みます。門を出て正面がカソン・ブエン・レティーロ(かつてのブエン・レティーロの宮殿の一部で、現在プラド美術館の別館)が見えてくるので、建物の左の道を下っていくとすぐプラド美術館です。

パルテレ庭園は、フランス生まれのフェリペ5世が、祖父であるフランス太陽王と言われベルサイユ宮殿をつくらせたルイ14世の お気に入りの建築家の弟子をよび、ブエン・レティーロ宮殿の大規模な修復をする予定が財政難でかなわず、せめて宮廷内の装飾とフランス風の庭園を造ろうという事で手掛けられた庭園です。

(財政難だったのは、火災でマドリードの王宮の再建、プラス、もっとマドリードから離れたのんびりした場所で暮らすために、この王はラ・グランハというお城をつくるのにもお金が必要だったため。ラ・グランハはマドリードから車で1時間ちょっと、セゴビアにあります)

パルテレ庭園周辺には、①ハシント・ベナベンテ(1922年にノーベル文学賞を受賞したスペイン人劇作家)のモニュメントや、

②マドリードでいちばん古い木と言われる樹齢約300年の古木や、
(この木の棲息地は中米が一般的で、スペインにはもともない木。レティーロ公園には、1783年ごろ持ち込まれたものといわれています。1600年代にはすでにこの地にあったという説もありますが、パルテレ庭園をフランス風に造園する際、この辺りにあった木は全て切り倒され、なおかつその頃この木がそんなに珍しい木だという認識はなかったはずなので、1600年代にここにあったとしても、伐採されたはずというのが有力説。)

ちなみにこの古木は、フェリペ4世の門に向かって右手の方にあります。

また③糸杉のトピアリー(変わった形に造形した木)などもあります。

まとめ

レティーロ公園は、総面積118ヘクタール。

敷地内には、169種 約19,000本の木が植えられています。

他にもバラ園などもあり、4月後半から5月にかけては見事なバラも観ることが出来ます。

(バラ園は、堕天使の噴水のすぐ先、右手の方にあります)

バラだけではなく、2月にはアーモンド、3月4月は、こちらではユダの木といわれる西洋ハナズオウや、マロニエなども満開です。

とても広い公園なので、効率よくお散歩ができるように、参考までに要点だけ簡単にまとめました。

ここでは、露店の本屋さんの方から始めるコースでしたが、アルカラ門の方から始めてもいいし、プラド美術館側からでも、都合のいいところから散策を楽しんでくださいね。

夏は、午後かなり温度が上がりますので、午前中のお散歩をお勧めします。