マドリード市内には、市から認定を受けた100年以上営業している店が、約170軒ほどあります。
店の入り口には、店の名前と創業の年が刻まれたブロンズのプレートが設置されていますが、意外と気がつかないもの。何気なく立ち寄ったそのお店は、実は3世紀以上にもわたって商売をしている本屋さんだったり、装飾に気を引かれて写真を撮ったその建物は、1600年代から営業しているホテルだったり・・・。そのうちのいくつかを紹介します。
1650年創業の本屋さん サン・ヒネス
ここは、もう3世紀以上続く本屋さん、サン・ヒネス書店、
お店といっても、屋根があるところだけで、ほぼ露店です。
屋根の後ろに見える壁は、実は、すぐ横のサン・ヒネス教会の一部。
この本屋さんの朝は、まるで花屋さんが、店先に毎朝花を並べるように、外の台の上に本を並べることからはじまります。これを300年以上続けてきました。
なかなか他では扱っていないような古い珍しい本、また古い切手、ポストカードなども扱っています。
ここは、マドリード旧市街地のなかでも特に人通りの多い、アレナル通り、王宮から徒歩7~8分のところです。このすぐ近くには、デスカルサス修道院(16世紀に造られた王立の修道院)や、有名なチョコレート屋さんなどもあるところ、きっとこの本屋さんの前も通るはずです。
古い街並みの中でも。ひときは古いこの一角。ぜひ写真を撮って行きましょう。
1894年創業 チョコラテリア サン・ヒネス
さっきの本屋さんの横の道入ってちょっと行くと、左手に見えてくるお店が、有名なチョコラテリア・サンヒネスです。
スペインはヨーロッパで初めてチョコレートを製造した国、もともとは特権階級の人達の嗜好品でしたが、その後はみんなが口にできるようになり、甘くてドロッとしたチョコレートドリンクは、特に夜働く労働者の帰宅前の楽しみの一つになりました。
今でも、スペインでは、朝帰りの若者たちが帰宅前にチョコレートを飲んだり、朝ご飯代わりに、チョコレートとチューロスを食べたりする習慣があります。
もちろん、ちょっとした休憩時間に、午後のおやつの時間にと、時間帯をとわず人気があります。
チューロのほかに、それよりちょっと太めのポーラというのも人気があります。
チューロとポーラは、スペインでも地方によって意見がまちまちで、2つは同じもので細かったらチューロ、太かったらポーラという地方もあれば、チューロ(細い方)と注文しても、はじめからチューロは太い方(ポーラ)だと言い切る地方、材料がちょっとちがって、ポーラには重曹が入ってるけどチューロには重曹は入れないとか、材料は全く同じであるとか・・・。
マドリードでは、細いのがチューロ、太いのがポーラ、ポーラの方がチューロより(重曹が入ってる分?)ふっくらサクサクした感じだと思います。
写真のように、一気に渦巻き状のものを店内で揚げて、15cmくらいの長さに切ったものがサービスされます。写真の、向かって左がチューロ、右のちょっと太めのがポーラ。
サクサクのチューロスとチョコラーテ、日本人にも人気で、2010年に東京にサン・ヒネスの支店を出したほどでした。(もう閉店してしまったとか)ぜひマドリードの大人気店でお試しください。
通常は入り口に列ができていますが、回転は速いです。順番が来たら入口レジの係に注文して、チケットを渡されるので、それをもって席が空いていれば好きな席に座ります。混んでいるときは、係が合図してくれるのでちょっと待ちましょう。席に着くと先ほどのチケットを取りに来ますので渡します。席は、外にもあるし、店内、地下もあります。トイレは地下です。
創業1610年 ポサダ デル ペイネ(マドリードで一番古いホテル)
ここは、マドリードで一番古いホテルで、1610年から営業しているホテルです。
マヨール広場という、マドリードに首都が定められた16世紀から17世紀にかけて作られた、当時の街の中央広場のすぐ近くにあります。
16世紀、首都が定められる前は、その後マヨール広場となった場所は、マドリードの外からの商人や農民たちが荷物を運びこんで、市場を開いていた場所でした。ちょうどその当時あった街の城壁のすぐ外側で、街に入るためのポルタスゴという税金を払わずに、城壁の外で勝手に商売をしていたのです。
街の外から馬やロバなどで荷物を運んできた商人、農民たちが、荷を下ろし、動物を休ませる、言ってみれば入口の駐車場みたいな場所だったのが、このポサダ デル ペイネというホテルがあるところです。
動物を休ませ、人も休息をとる場所が必要ということで、創業者のホアン ポサダという人物は、この場所にホテルを開業したのが、もう400年以上前。
その後何度か経営者がかわり、事業拡大したり、逆に縮小したり(1970年から2005年は閉まっていました)、現在は、PETIT PALACE HOTEL チェーンの経営となっています。
ペイネというのは、櫛のことです。
このホテルがこの名前で呼ばれるのは、当時まだ珍しいアメニティのサービスがすでにあって、部屋で宿泊客が使えるように、櫛を準備していた宿で、その櫛を持ち帰れないように、ひもで結びつけてあったのだそうです。ホテルの備品を持ち帰りたい気持ちは、今も昔も同じですね。
もしろん、外向きの部屋が高級でした。理由は、景色がみえるという理由だけではなく、換気の問題で、内側の部屋は狭いうえに、窓もなく大変だったようです。
建物の外観がすごく特徴があります。ここもぜひ写真を撮って行きましょう
創業1880年の時計屋 アンティグア レロヘリア
ポサダ デル ペイネからマヨール広場の方に移動するとすぐにこの時計屋があります。
入口上の時計職人の人形が、レトロな鐘の音で時をしらせてくれます。
よーく見ると、職人人形の後ろには、砂時計、鳩時計、正面には日時計もあるんですよ。
1880年創業、当時はおしゃれな紳士たちが懐中時計を使っていた時代です。
今でも、お店では、「懐中時計は特別な時計、贈る方もだけど、それを持つ人はたぶん一生その時計を大事にするだろう」と、そんな優しい、職人気質なことを言いながら、一人一人の接客を丁寧にしてくれます。
かつてのスペインの首相アドルフォ・スワレスから、当時のスペイン国王への贈り物で、王の名前を刻んだ時計の依頼を受けたこともあるんだそうです。
マドリードには、まだまだこういった歴史のあるお店がたくさんあります。
旧市街散策中に歩いて回れる、近い場所にあるお店を数件紹介しました。
また機会があったら、他のお店の紹介もしたいと思います。