スペインバスク地方、ビルバオで人気の【グッゲンハイム美術館ビルバオ】
正面玄関で皆さんをお迎えするのはこの子は、PUPPYちゃんです。
PUPPY
英語読みだと、パピー(子犬)ですが、スペイン人は何でもスパングリッシュ(スペイン語風英語)なので、
この作品はスペインでは、プピー。
グッゲンハイム美術館(ビルバオ)が開館した1997年から、美術館へ来るお客様、またビルバオの街を訪れる観光客の方々、そして地元住人のマスコット的存在として、美術館の正面玄関にちょこんとお座りしているワンちゃんです。
プピー基本情報
犬種
ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
誕生日 出生地
1992年 ドイツ
ビルバオにやって来たのは、1997年、グッゲンハイム美術館のオープンの時ですが、プピーは1992年ドイツのバート・アーロルゼンで開催された美術展示会のために制作されたもので、もともとは木製でした。
幼少期
その後、現在ビルバオにあるプピーも、この街で誕生したわけではなく、オーストラリアでオリジナルの木製のものより長持ちする素材にかえて制作され、シドニー現代美術館に設置されていました。
グッゲンハイム美術館が購入した後、シドニーで一度解体し、それをグッゲンハイム美術館のオープンに合わせて再度組み立てなおしたものです。
生みの親(作者)
ジェフ・クーンズ(1955~)
プピーの作者はアメリカン人芸術家ジェフ・クーンズ。生存中の芸術家のなかで最も稼ぐ芸術家の1人といわれますが、彼の作品は賛否両論、あまりにも安っぽいポップアートと揶揄されることもあります。過去には著作権の問題で起訴されたり、既存の芸術家とは違った形での宣伝、マーケティングなど、作品だけではなくいろんな意味で注目を集める、ポップな(?)芸術家。
サイズ
プピーは、高さ 12.4メートル 重さ 約15トン
構造
内部空洞で(わからないように1ⅿほどの高さのドアがあり、中に入れる)、ステンレス製の枠があり、箱のようなものに土(この土は4~5年に一度入れ替えます)が入れられ 周りに配置されています。その周りに金属製のネットとジオテキスタイルという透水性のある繊維を材料とした緑色のシートがかぶせてあります。そのシートに穴をあけて植物を植え込んで、犬の形にしたトピアリー彫刻です。
灌水
内部は4階構造で、114カ所から水と肥料が流れ出す複雑なシステムになっています。水撒きは、毎日、夜22時30分から1時間半にわたって行われています。
植物の管理
作品の柄や色、植物の種類などは、作者ジェフ・クーンズによって決められたものがあり、その範囲で、年2回の総植え替え、それとは別に伸びすぎた植物の剪定、必要に応じての灌水システムのメンテナンスなど、毎月約€9,000(約120万円)の管理費用がかかります。
管理が難しいのは、自然の物なので、雨、風、日当たりなど微妙な環境の変化で、作品が変わってしまう事。何かを変更する必要がある時は、作者の許可が必要です。
植物の数
植物の数は、38,000~40,000本 約10日間くらいの間に30人ほどの植木職人さん達の手によって行われます。
植物の種類
春から夏にかけては、インパチェンス、ベゴニア、ミゾカクシ、カッコウアザミ、マリーゴールド、セイヨウキヅタ、ペチュニアなど。
秋から冬にかけては、パンジーや、こちらでプリムラと呼ばれる花などです。
作品のメッセージ
この作品は、Optimismo(楽観)、Confianza(信頼)、Seguridad(安全性)などを表現したそうですが、ジェフ・クーンズは常々、「現代アートに隠れた意味やメッセージを探す必要はない」と言うような事を言っていて、確かに、犬が持つイメージそのまま(楽観・信頼・安全性)なのかも知れません。
作者は、完全な形での植物の管理をもとにこの作品を制作しましたが、同時に、一本だけ伸びすぎてしまう茎や、なぜか花が咲かないのがあったり、それぞれの個体に個性があり、完全に管理できない植物が、この作品に命を吹き込んでいるという事も言えると思います。
プピーの誕生の頃、ジェフ・クーンズは芸術家として厳しい評価を受けていた時代で、この作品がグッゲンハイム美術館、またビルバオに受け入れられたことにすごく感謝をし、芸術家としての評価をもう一度安定させる転機にもなった作品です。
プピーの価格
1997年にグッゲンハイム美術館がこの作品を購入した時の価格は、1,200,000ドル(現在のレートで約1億3000万円)でしたが、約20年後、54,000,000ドル(約59億円)の価値があるとの事。
プピーがやって来た頃のビルバオの街
ビルバオの街は、かつては造船・鉄鋼業で栄えていた街でしたが、1980年代からのこれら地元産業の衰退で失業者が増える中、街の再開発事業の目玉の一つでもあったのがグッゲンハイム美術館への誘致でした。
もちろん美術館だけではなく、街のインフラ整備、商業施設の開発など、トータルでの再開発が行われ、結果的には、”世界で一番成功した街の再開発の一例”と評価されるほどの効果があり、今でも世界中の街再開発事業関係者の注目を集めています。
まとめ
良きにつけ、悪きにつけ何かと注目を集める生みの親ジェフ・クーンズによって、ドイツで産声を上げ、シドニーで幼少期を過ごし、人生のいたずら(?)でビルバオの街へやって来たプピーちゃん。
「こんな物にこんな大金を・・・」と厳しい地元の人達の声の中、オープンしたグッゲンハイム美術館を中心として、鉱業の街からサービス、観光業の街へと生まれ変わったビルバオの街。
今ではプピーは、グッゲンハイム美術館の看板であるだけでなく、ビルバオのアイコンとして押しも押されぬ安定した人気のワンちゃんに成長しました。
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