【ビスカヤ橋】は世界遺産 世界最古の運搬橋って いったいどんな橋? 

北スペイン、バスク州ビルバオにあるビスカヤ橋

この橋、実は世界で初めて架けられた運搬橋で、なんと世界遺産にも登録されている面白い橋なのです。

地元では、【吊り橋】と呼ばれるこの橋、ビルバオ観光では必見の場所です。

Ebaki, CC BY-SA 4.0 la Wikimedia Commons

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ビスカヤ橋があるビルバオ

北スペイン、バスク州は、アラバ県、ビスカヤ県、ギプスコア県という3つの県から成り立っています。

この有名な運搬橋があるのはビスカヤ県、その県都がビルバオ

現在のビルバオの街は、グッゲンハイム美術館を中心にサービス・観光業の街として都市開発が成功しましたが、かつては、鉄鋼・造船の街として、ヨーロッパでも有数の港町でした

ビルバオの街を流れるネルビオン川は、河口からビスケー湾、大西洋へと流れています。このネルビオン川の川岸は、20世紀後半それまで街を支えていた産業(鉄鋼、造船)が衰退するまでは多くの工場があり、大型の貨物船がこの川を運行していた時代がありました

バスク地方は、19世紀中ごろからスペイン王家、また国境を越えたフランスバスク地方でもナポレオン3世もお気に入りで宮殿を造ったり、それに伴って貴族階級や、産業革命で財を成したブルジョア階級の人達などの人気の保養地。

ビルバオの街は、ネルビオン川を挟んで左岸は労働者階級、右岸はブルジョア階級の居住地、別荘地、そしてヨットハーバー、スパ、ビーチなどの施設も右岸でした。

右岸(ゲチョ地区)
Spike, CC BY-SA 4.0Wikimedia Commons
Ebaki, CC BY-SA 4.0 Wikimedia Commons

当時川を渡って働きに行く人、必要な物資を運ぶ人は、大型船が通る川を小舟で渡る、もしくは陸地を河口からビルバオの街の中心まで行ってまた同じ距離を戻って対岸の目的地まで・・・という時間と労力が必要で、それに代わる橋が必要なのは明らかでした。

ここで問題だったのは、大型貨物船の運行を妨げないように、人や物を運ぶ橋を架けるということです。

橋が低いと船の運行を妨げ、高い橋を造るには、傾斜路を長くする必要があり巨大な橋になり、傾斜度が高いと当時の自動車や馬車では登り切れない、またすでに川沿いには建物があるのでその撤去が必要になる・・・などの問題点があげられました。

Tim Tregenza, Wikimedia Commons

様々な案が検討され、その中には例えば跳ね橋であったり、跳開橋(ロンドンのタワーブリッジみたいな橋)、旋回橋などありましたが、 経費と環境を考え最終的には、吊り橋式の運搬橋を造ることになったのです。

運搬橋

運搬橋と言われても、実際に橋を見るまでは、なかなかどんな橋なのか想像できないのですが、

橋の全体像はこんな感じ。

長さ164m 高さ45m 

Mikemod, CC BY-SA 3.0 Wikimedia Commons

普通だと、45mの高さにある上の部分を人や乗り物が通るわけですが、

Xagopa, Wikimedia Commons

この橋は、上からワイヤーで吊るしたゴンドラのようなものがぶら下がっています。
このゴンドラを使って人や物が川を渡ります。

Y_tambe, CC BY-SA 3.0 Wikimedia Commons

MERCHEBB, Wikimedia Commons

ゴンドラは小さく見えますが、真ん中の屋根がないスペースのに車が6台、自転車やバイクが約10台、そして左右の白い窓付きの箱の中に合計200人の人が一気に乗ることが出来ます。

Pacopac, CC BY-SA 4.0 Wikimedia Commons
Smatxi, CC BY-SA 4.0 Wikimedia Commons

地元の人達は、バスの乗り換えをするような感覚で、この区間を運搬橋のゴンドラで普通に行き来しているのです。

橋を渡る方法は2つ

Javier Mediavilla Ezquibela, Wikimedia Commons

1.ゴンドラに乗って渡る。

ゴンドラは、8分おきに運行しています。

下の写真の白い箱の部分、側面にも窓がありますので、外の景色を見ながら・・・、と言っても片道1分30秒くらいで、椅子があるわけでもなく、あっという間に対岸へ到着です。(ゴンドラのスピードは時速3㎞)

料金は、

金額時間
€0.455:00-22:00
€0.7022:00-24:00
€1.6024:00-5:00

基本的には365日24時間いつでも運行しています。
※料金は現地で確認して下さい。変更している可能性あり。車や自転車は別料金。

I, Fernandopascullo, Wikimedia Commons
Pacopac, CC BY-SA 4.0 Wikimedia Commons

2.橋の上部を歩いて渡る。

エレベーターで45mの高さまで登り(係が誘導してくれます)、鉄の橋だけど床の面はなぜか木製の橋を自分のペースで歩いて渡ることもできます。

料金は、€9 (その他いくつか割引料金有り)
歩いて渡れる時間は、

11-3月月~金ゲチョのみ 10:00-19:00
11-3月土~日ゲチョ 10:00-19:00
ポルトゥガレテ 10:00-19:00
4-10月月~日ゲチョ  10:00-14:00
16:00-20:00
       
ポルトゥガレテ 10:00-14:00
16:00-20:00
12/25 ,1/1 ゲチョ    10:00-14:00
ポルトゥガレテ 17:00-19:00

※料金、時間は変更有り、現地で確認してください。時間帯、シーズンによってはエレベーターは混んでいるので、すぐに登れない時もあります。また、片方のエレベーターしか動いていない時があるので、その場合は同じところに戻り、歩いて対岸には渡れません。

橋の上からの景色 Spike, Wikimedia Commons

下でゴンドラが動いている時は少し揺れます。

ちょっと怖いですが、上からの景色は素晴らしいです。

せっかくなので時間的に可能なら、片道ゴンドラで、片道歩いて上からの景色も楽しむというのがお勧めです。

橋のデザイナー

橋のデザインを手掛けたのは、バスク地方出身のアルベルト・パラシオ(1856 -1939)

アルベルト・パラシオ Mikemod, Wikimedia Commons

バルセロナで建築の勉強をし、パリでエッフェル塔で有名なギュスターヴ・エッフェルに学びます。産業革命における、製鉄技術の進歩によって、鉄を使った新しいタイプの建造物が注目され、その技術をいち早く取り入れた建築家の1人だったのがアルベルト・パラシオでした。

アルベルト・パラシオは、ビスカヤ橋だけではなく、例えば、マドリードのレティーロ公園内のガラスの宮殿や、アトーチャ駅の設計にも携わった、当時特に優秀な建築家でした。

現代とは一味違う、優雅で繊細な鉄の建造物が造られた時代、その中にあってビスカヤ橋のアイデアは、かなり斬新な物で、世界で初めて作られたビルバオの運搬橋は、その後ヨーロッパ内外で建設された運搬橋のモデルになっていきました。

Telle, Wikimedia Commons

世界遺産

運搬橋の建設が始まったのは1890年、完成したのが1893年。
スペイン内戦の際、右岸側の橋が一時破損しましたが、その後修復され、現在も使用中です。

橋の上部に歩行者専用の通路とそこまで登るためのエレベーターが設置されたのが1999年。

そして2006年、「機能性と美しさが調和した、産業革命時代の画期的な鉄の建造物で、世界最古の使用中の運搬橋」として、世界遺産に登録されました。

Ebaki, CC BY-SA 4.0 Wikimedia Commons

ビルバオ中心地からの行き方

ビルバオ中心地からビスカヤ橋までは、メトロで行く事が出来ます。(ビルバオ中心地から30分位)
※バスも近郊線もありますが、ここではメトロだけ記載します。

ビルバオにメトロ路線図Laukatu, Wikimedia Commons

≪メトロ最寄り駅≫

1号線【赤】のAreeta 駅(右岸側) から徒歩10分くらい
2号線【黒】のPortugalete駅(左岸側) から徒歩15分くらい

ポルトゥガレテ(左岸側)から古い街並みの坂道を下って(動く歩道もある)行くと道の間から橋が見えてきます。

川を渡った右岸はゲチョと呼ばれる地区で、豪華なお屋敷や別荘、またヨットハーバーなどもあります。

まとめ

かつて世界には、運搬橋は25本建設されましたが、現在も使用中の運搬橋は5本です。

その中でも最古の運搬橋が、ビスカヤ橋。

市民の公共交通機関として、また上部の歩道に登るアトラクションとして、21世紀の現在も立派に活躍している、おもしろい世界遺産です。

Tim Tregenza, CC BY-SA 3.0 Wikimedia Commons