【マドリードの旧市街地】 アレナル通り(Calle Arenal)見どころ

マドリードの中心地プエルタ・デル・ソルから、王宮手前のオペラ座までの通りがアレナル通りです。

アレナル通りの歴史や、見どころを紹介します。

アレナル通り
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アレナル通り

アレナルとは、砂地の事をいいます。この場所が昔は砂地であったことからこの名前で呼ばれています。

Basilio, CC BY-SA 3.0 Wikimedia Commons

現在のアレナル通りがある場所は、かつてマドリードにあった城壁の外側で、小さな川(川というほど大きくもない)が流れていたところ。小川の両岸は少し土地に傾斜があり小川を中心に(ちょっと大げさに言うと)Vの字型の地形でした。

夏になると水が枯れ、そこには小川の代わりに砂地が現れるような状態でした。

小川の両岸の現在のサン・ヒネス地区と、反対側のサン・マルティン地区の土地開発の時、両岸の砂地を崩して埋め立てて平地にして、それがアレナル通りの歴史の始まりでした。

見どころ

①レアルマドリード・オフィシャルショップ

サッカー好きの方、もしくは、好きじゃないけどお土産に頼まれた方、レアルマドリードのオフィシャルショップの一軒は、アレナル通り(Calle Arenal 6)にあります。サンティアゴ・ベルナベウのレアルマドリードスタジアムショップは、規模的には断然大きいですが、ちょっと街の中心から離れているので、スタジアム見学に行かないのなら、街中のショップが便利です。

※アレナル通り以外にも、プエルタ・デル・ソルの近くカルメン通り(Calle Carmen 3)にも一軒、グランビア通り(Gran via 31)にもありますよ。

②Ratónsito Pérez の家

ラトンシートは小さなネズミの事で、ネズミのペレス君のお家は、アレナル通りの8番地。

スペインでは、子供たちの歯が抜けると、枕の下に抜けた歯を置いておくと、寝ている間にネズミのペレスが歯を取りに来て、かわりにお菓子や、おこずかいのコインなどを置いて行ってくれます。
クリスマスのプレゼントみたいに、起きるとプレゼントが置いてあるという、夢のあるお話。

これは、1894年当時8歳だった後のスペイン国王アルフォンソ13世のために、ルイス・コロマが書いた童話でした。アルフォンソ13世の父、アルフォンソ12世は王子が生まれる約半年前に亡くなり、父親を知らずに育ったアルフォンソ13世のために母親マリア・クリスティーナ女王が依頼したものと言われます。

この話の中で、ネズミのペレスが住んでいたという設定になっていたのが、アレナル通り8番地に実在していた、Prast というお菓子屋さんで、その地下でクッキーの箱の中に住んでいたのが主人公ペレス

スペイン以外でもスペイン語を話す多くの国で翻訳され、ネズミのペレスは人気者です。

ペレスのお家は、現在は博物館になっています。

③Palacio Gaviria ガビリア公爵邸

ガビリア公爵は、19世紀のスペインの銀行家。当時の女王イサベル2世との親交もあった人物。

アレナル通りは王宮にも近く、特に19世紀には産業革命で財を成したセレブたちのお気に入りの通りでした。

1851年に女王イサベル2世も出席するほど盛大な、完成記念のダンスパーティーが行われたことでも有名です。

現在も当時の優雅な装飾の大きなサロンうちの3部屋が、イベントや展示会場として使用されています。

⑦フラメンコの衣装や靴の店【Maty】

ネズミのペレスの家の次の道を右(Placio Gaviria の正面の道)に入っていくと、すぐMatyという店があり、ここはフラメンコの衣装や靴などの専門店です。衣装だけではなく、フラメンコ用の派手なアクセサリーや扇子、マントンなども扱っています。

(サンヒネス教会の先左手 ⑧calle Hileras 7 にもMatyはあります。)

④Joy Eslava

もともとは音楽家Hilarión Eslava の甥で実業家・音楽家のBonifacio Eslavaが建てた、マドリードで特に有名で重要な劇場で1871年にオープンしました。

初めは、楽器の倉庫とコンサートホールとして使用され、その後改築工事などが行われ、最終的には劇場の内装を残しつつ、若者やたちや著名人が集まる伝説の劇場・クラブとして長い間人気のある場所です。

※2020年11月から改装工事中のため、現在はクローズしています。

⑨Librería San Ginés(サン・ヒネス書店)

アレナル通りに、何ともかわいらしい本屋さんがあります。

サン・ヒネス書店、書店と言っても、隣の教会の壁を利用して、本はほとんど外に並べられている、露店風の本屋さん。

見るからに古そうですが、この本屋、記録に残っているだけでも1650年からここで本屋さんとして営業している、マドリードで一番息の長い本屋さんです。

3世紀以上にわたって、何回も持ち主が代わっていますが、現在はハビエル・サンツさんが店を守っています。彼の父親ルイス・サンツさんがこの本屋を受け継いだのが1952年、ハビエルさんは、13歳の頃からお父さんの仕事を手伝っているそうです。

店を閉めるのは、クリスマスとお正月だけ、毎朝、外の木製のテーブルに商品を並べ、また夕方には全て店の中に取り込んで、毎日営業しています。

扱っているのは、セカンドハンドの本、絶版になっているような古い本、その他もろもろ、本好きさんにはたまらないアレナル通りの一角です。

近年のデジタル化で書籍離れしている今の時代、商売を続けていくのはとても大変なようで、また建物が木製で、いろいろ維持管理が大変ですが、いまでも熱心にこの本屋さんに通う常連のお客さんや、観光客のおかげでなんとか営業を続けているそうです。

この本屋さんに限らず、どこも今回の禍で存続の危機ですが、3世紀以上にもわたる歴史がこれからも続いてほしいと思います。

⑩チョコラテリア・サン・ヒネス

サン・ヒネス書店とJoy Eslavaの間の道に入っていくと、1894年創業のマドリードで一番有名なホットチョコレートとチュロスの店、チョコラテリア・サン・ヒネスがあります。

店内にも席はありますが、外の異次元空間的なテラス席で、ドロドロのチョコレートとサクサクのチュロスでほっと一息、旧市街散策中の休憩のお約束ポイントです。

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⑤サン・ヒネス教会

Luis García, CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

11世紀には当時壁の外だったこの辺りにあった教会で、17世紀この地期の地盤沈下があり、その後再建されたのが現在の建物。その後何回も修復をし、また19世紀に火事がありその時も大きく修復をしたもの。

その頃は、アレナル通りに劇場ができたり、お屋敷が建てられたりとセレブな通りで、街の富裕階級の人達の寄付によりずいぶんきれいに修復されています。

教会修復費用を寄付した方々のお墓は、この教会の礼拝堂に埋葬されていて、スペインで唯一のデパート 【エル コルテ イングレス】の創立者ラモン・アルセス氏もこの教会に埋葬されています。

内部の装飾も素晴らしく、中でも特筆すべきは、エル・グレコがトレドで晩年に描いた作品【La explusión de los mercaderes】です。
(グレコの絵が見学できるのは、火曜~金曜の18時~19時、土曜10時~11時、11時30分~12時)

エル・グレコの作品

この作品は1610年から1614年頃にトレドで描かれた作品で、1700年に教会に寄贈されました。

その後、時代とともに忘れ去られていたもので、一時期はエル・グレコの弟子が描いた作品と言われていましたが、20世紀の修復作業の際、エル・グレコ本人のサインが確認されています。

⑪デスカルサス・レアル修道院

サン・ヒネス教会を過ぎて、右側の一本目の道を登っていくと、16世紀に造られたデスカルサス・レアル修道院があります。

修道院と言っても、当時のスペイン王家の女性たちのために建てられたこの修道院は、芸術品の宝庫

館内は、ガイド付きツアー予約者のみ見学可。(空きがあれば当日券を買う事も出来ますが、オンラインでの予約をお勧めします)

慶長遣欧使節の支倉常長一行は、この修道院の教会で洗礼式を受けたという、日本人とも関わりのあった修道院です。

⑥イサベル2世広場(オペラ広場)

地下鉄オペラ駅がある広場は、【イサベル2世広場】といい19世紀のスペイン女王イサベル2世の銅像が置かれています。

Basilio, CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

イサベル2世の頃から、スペインでは女性も王位を継承することができるようになりました。

ここは15世紀から19世紀にかけて、洗濯をしたり、日常生活に必要な水の用水路と噴水があった場所で、梨の木がたくさんあった女王様の菜園と呼ばれた畑にも水を供給していました。

1991年、地下鉄駅拡張工事の際かつての噴水の遺跡が発掘され、そこは現在遺跡を展示する博物館になっています。(イザベル2世広場地下)
また、かつての噴水のレプリカが再建され、イザベル2世広場に設置されています。

噴水のレプリカ Tamorlan, CC BY 3.0 via Wikimedia Commons

19世紀の初めマドリードはナポレオン軍に占領され、ナポレオンのお兄さんがスペイン国王ホセ1世として即位しました。

ホセ1世は、王宮からプエルタ・デル・ソルまでの現在のアレナル通りを、当時の街の大通りとして整備をする計画で、王宮前の民家などの建物を撤去させました。その時にできた敷地が、現在の王宮前の広場(オリエンテ広場)からイザベル2世広場の辺りでした。

イサベル2世の銅像の後ろの大きな建物はマドリードのオペラ座、【王立劇場】です。

18世紀の国王フェリペ5世はフランス生まれの王様で、彼がスペインの国王となった時、オペラ好きの王は、Teatro de los cañones del peral という劇場を造りました。その劇場は1817年まで営業をし、1818年からイサベル2世の希望で新しく劇場をつくり1850年にオープン。その後数回大きな拡張、修復工事をし、現在の王立劇場になっています。

まとめ

アレナル通りはこのように、見どころがいっぱいです。

ここでは紹介しきれない、ショップもたくさんあります。※Arenal 18 のDecathlonは、フランスのスポーツウエアやスポーツ用品のお店で、スペインでも人気のチェーン店です(日本ではまだ数店舗のみ)。

2006年以降、歩行者(と、荷物の搬入の車)専用の道なので、ゆっくりと写真を撮り、お買い物をしながら散策が楽しめます。

イサベル2世広場の王立劇場の奥には王宮もあります。何時間あっても時間が足りなくなる地区です。